「マス&コミュニケーション」プロジェクトとは

「マス・コミュニケーションの時代」から「マスがコミュニケーションする時代」((c)古川柳子)へ。そのときメディア、コミュニケーション、リテラシーはどのように変化するのか、構想しうるのか。
「マス&コミュニケーション」は、旧メル・プロジェクトのメンバーを中心として、マスメディアと市民の回路作り、新たなマス・コミュニケーションのあり方を模索することに興味を持つ、多様な領域、職種の人々からなる異種混淆的な研究プロジェクトです。
具体的には、水越研究室が共同研究をおこなっている「民放連メディアリテラシー実践プロジェクト」、「ろっぽんプロジェクト」(テレビ朝日との共同研究)という、いずれもマスメディアと市民の協働的メディア・リテラシーの構築を目指す協働研究プロジェクトを総合的に進めることが目的となっています。
いい方を変えれば、これらのプロジェクトを個別バラバラにおこなうのではなく、研究として一貫した、総合性のあるものとするために「マス&コミュニケーション」プロジェクトがあるといえます。
しなやかに、したたかに!
クリティカルで、プラクティカルに!
それが「マス&コミュニケーション」のモットーです。

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2/5 KBC「ラジドラ学園セミナー」

KBC九州朝日放送「おっきーのラジドラ学園セミナー」

2009年度の民放連プロジェクト参加局である九州朝日放送で、毎年恒例となっている「おっきーのラジドラ学園」セミナーが、今年も開催されました。このセミナーは、福岡の高校生(主に放送部)の皆さんをKBCにお招きし、ラジオ番組がどのように作られているのかを体験したり、現場で働く人たちとの交流を深めようというものです。今年も約100人の学生、先生方が集まりました。私も福岡女学院大学人文学部表現学科の学生4人といっしょに、参加してまいりました。

会では、まず、他県の高校生が制作したラジオドラマを視聴し、ディスカッションを行った後、放送作家の香月隆さんより解説が加えられました。
その後は、分科会に別れ、沖アナウンサーによるアナウンスセミナーや、番組ディレクターといっしょにラジオ作りを体験。放送局員、高校生、大学生も入り交じりながら、短時間とは思えないユニークなラジオ番組が制作されました。

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ほんの3〜4人のスタッフで、100人を対象としたイベントをきりもりされるKBCのみなさんは本当にお忙しそうでしたが、しかしながら、そうした人手が少ない分、椅子はこびから番組の進行まで、高校生や大学生がいっしょになっていつのまにか協同していく姿は微笑ましく、また、最後は会場は一体感につつまれ大いに盛り上がりました。みなさんの充実した笑顔は、とても印象的でした。

KBCのみなさん、参加されたみなさん、ありがとうございました。

(林田真心子/福岡女学院大学)

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11/11 民放連メディアリテラシープロジェクト最終報告会

民放連メディアリテラシー・シンポジウム
〜視聴者との新しい関係のために〜

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日本民間放送連盟とマス&コミュニケーション・プロジェクトの共同で5年間にわたって行われた「メディアリテラシー実践プロジェクト」が終了しました。その成果を振り返るとともに、デジタル放送時代のメディアリテラシー活動を展望するシンポジウムが2011年11月11日(金)、秋葉原のUDX Gallery Next で開かれました。金曜日の午後17時30分からという、忙しい時刻にもかかわらず、在京放送局やローカル放送局関係者、プロジェクトに参加した方々(当時小学生、現在大学生)、ネット関係者、研究者など約120人が集まりました。

詳しくは、民間放送連盟のウェブサイトに報告されていますので、ご覧ください。

民放連メディアリテラシープロジェクト シンポジウム報告

ここでは、会で紹介された内容や登壇者の現在の活動を概観できるウェブサイトをご紹介します。

まず、このプロジェクトを進めてきた水越伸氏より、プロジェクトの特徴や体制の紹介などが行われた後、最終年度(2010年度)の実践局である文化放送の大河原聡氏より、内容の報告が行われました。また、民放連番組部の山田眞嗣からは民放の「メディア・リテラシー活動に関する調査」について紹介がありました。以上の詳細は、2010年度の活動報告書にまとめられていますのでご参照ください。
2010年度 活動報告書

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続いて、第2部では、「視聴者と放送局の新しい関係のために 〜放送局が取り組むメディアリテラシー活動の意義〜」として次の方々によるパネルディスカッションが行われました。
倉田治夫氏(テレビ信州専務取締役)
鈴木裕美子氏(テレビ朝日お客さまフロント部長)
コメンテーター:見城武秀氏(成蹊大学文学部教授/民放連メディアリテラシー活動推進部会有識者委員)
司会:境真理子氏(桃山学院大学教授)

テレビ信州は、現在「長野市フルネットセンター」の指定管理者となっており、メディアリテラシー活動の拠点をそちらにおいて、実践を続けています。それをふまえ、倉田氏は今後の「課題と夢」として、「いかに継続するか」という困難があること、それを乗り越え「学びの空間=寄り合いの場」を構築するような活動に展開したいという今後への希望を語られました。

一方、テレビ朝日の鈴木氏からは、3年にわたっておこなった「ろっぽんプロジェクト」の紹介が行われました。ろっぽんプロジェクトについては、このウェブサイトでも詳細を報告していますのでそちらをご覧ください。

お二人の報告をうけた見城氏からは、メディア・リテラシー実践の意義について、「ややこしさ」「立場の違い」「終わりのなさ」の3つをポイントに、コメントがありました。具体的には、私たち、あるいはメディアがものごとをみる「フレーム」を例に、それぞれ、「今までと異なるフレームでメディアをみる手助けができる」「放送局にとっても、異なるフレームで見るきっかけとなる」「『究極』のフレームはない」としました。

【シンポジウムを終えて】
パイロット研究をふくめて約10年間にわたった民放連プロジェクトは終了しました。民放連では、今後は、放送局が行うメディア・リテラシー活動への助成というかたちで、プロジェクトはひきつがれます。
一方、マス&コミュニケーション・プロジェクトとしては、ひきつづき、メンバーだけでなく、これまでの実践で出会ったみなさま方とともに、

しなやかに、したたかに!
クリティカルで、プラクティカルに!

実践にとりくんでいく予定です。

(報告:林田真心子)

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2011/11/11 民放連メディアリテラシー・シンポジウムのお知らせ

民放連メディアリテラシー・シンポジウム 〜視聴者との新しい関係のために〜

民放連「メディアリテラシー実践プロジェクト」の5年間の成果を振り返るとともに、デジタル放送時代のメディアリテラシー活動を展望するシンポジウムが下記のとおり開催されます。みなさまのご参加をお待ちしています。

日時:11月11日(金)午後6時〜8時45分
会場:UDX Gallery Next(JR秋葉原駅前)

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参加ご希望の方は、「お名前」「所属」「連絡先メールアドレス」をliteracy2011@マークnab.or.jpまでお送りください(@マークを、半角@に変換してください)。参加費は無料です。

【プログラム】

第1部 メディアリテラシー実践プロジェクト報告 (18:00〜19:00)
水越   伸 氏(東大大学院情報学環教授/民放連メディアリテラシー実践プロジェクトチーム副主査)
大河原 聡 氏(文化放送総務局長/2010年度プロジェクト実施担当者)
山田 眞嗣(民放連番組部)

第2部 パネルディスカッション 視聴者と放送局の新しい関係のために (19:10〜20:40) 〜放送局が取り組むメディアリテラシー活動の意義〜
<パネリスト>
倉田 治夫 氏(テレビ信州専務取締役)
鈴木裕美子 氏(テレビ朝日お客さまフロント部長)
見城 武秀 氏(成蹊大学文学部教授/民放連メディアリテラシー活動推進部会有識者委員)
<コーディネータ>
境 真理子 氏(桃山学院大学教授)

むすびにかえて
民放連メディアリテラシー助成事業について (20:40〜20:45)
広江 潤 氏(日本テレビ・執行役員コンプライアンス推進室長/民放連メディアリテラシー活動推進部会幹事)

■主催 日本民間放送連盟 放送基準審議会
■協力 東京大学大学院情報学環水越伸研究室マス&コミュニケーションプロジェクト

<お申込み・お問い合わせ>
民放連番組部(担当:山田/佐藤)
電話:03-5213-7707
E-Mail:literacy2011@マークnab.or.jp(@マークを、半角@に変換してください)

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2011/4/19 岡山放送presents「マスメディア論」スタート!

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福山大学人間文化学部メディア情報文化学科に今年度、「マスメディア論」という講義を新設しました。この講義では今年、岡山放送と共同で新しい試みに取り組んでいます。
「マスメディア論」には半年間、岡山放送から2名の現役局員の方(中尾公 総務局次長 と 塚下一男 東京支社業務部長)に講師としてお越しいただきます。編成、営業、報道といった多角的な観点から、ローカル局の現状、課題や展望などをお話しいただく予定です。
ただし、履修者は講師の話を聴くだけでありません。大学生は今、身のまわりに溢れるメディアに対してどのような関心を持ち、その中でテレビをどのように受け止めているのでしょうか。こうしたことを放送局の方々が探り、学生と語り合う場にしていきます。放送局の側からみれば、いわゆる”テレビ離れ”のリアリティを知り、その深層を掘り下げるきっかけになるのではないかと思います。
岡山放送は2008年度、民放連メディアリテラシー実践プロジェクトに取り組みましたが、昨年度、こうした取り組みを無理なく継続するための意見交換を重ねた結果、この講義が実現しました。
講義の内容は、学生との質疑応答を含めて、すべて収録します。岡山放送では後日、社内試写をおこない、講義の内容に関連する部署からは、学生の意見に対する見解や質問への回答を出していただき、次の講義のさいに報告してくださることになっています。すべての講義が終わったあと、ローカル局のあり方について学生と討議する計画も立てています。
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そういうわけで、一昨日スタートした講義には、講師とは別に6名のスタッフが教室にいらっしゃいました。カメラマンさん2名、音声さん1名の2カメ体制。制作部からは3名いらっしゃって、そのうち1名は、前日に配属されたばかりの新入社員。ずいぶん奇妙な新人研修になってしまったようです。かなり大掛かりなクルーで、教室自体がマスメディアの制作現場となっています。
地上波のデジタル化が完了する7月まで、あとわずか。テレビのあり方が大きく問われている今、ローカル局の存在価値を探究する実験のひとつになればといいなと考えています。

(飯田豊/福山大学)
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2011/4/13 「”つなぐ力”で放送の再生を」『民間放送』紙に掲載

“つなぐ力”で放送の再生を 

民放連メディアリテラシー実践プロジェクト 〜5年間の成果とこれから〜

本プロジェジェクトのメンバーで、長きにわたって民放連メディアリテラシープロジェクトに携わってこられた境真理子さんが4月13日の『民間放送』に記事をよせられましたのでご紹介します。

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「民放連メディアリテラシー実践プロジェクト」 〜5年間の成果とこれから〜

境真理子(桃山学院大学教授)

未曾有の大災害が襲った。日本型社会システムが、変革を迫られている。放送も例外ではない。今のありようからその先の新しい放送の姿を描けているだろうか。少なくとも、昨日に戻ろうとする惰性は排してほしい。編集部からの依頼は、民放連メディアリテラシー実践プロジェクト、5年間のまとめと成果である。放送は何を目指すのか。それは私たちの社会に本当に必要なものとされるのか。また必要と言われるために何をすべきか、そう問いをたてるとき、メディアリテラシーは、明確な道標になる。少なくとも現在の混沌としたメディア状況のなかで、放送の再生とメディアリテラシーは分けて考えることができない。放送とメディアリテラシーをめぐる取り組みに、筆者は研究者チームのメンバーとして参画した。この5年間を振り返ることは、単に昨日までのまとめではなく、明日の放送のグランドデザインを描くことにつながると考える。メディアリテラシーは有効な座標軸となるだろう。
まず、民放連メディアリテラシー実践プロジェクトの概要を整理する。実践は、東京大学大学院・情報学環の水越伸氏を中心とする研究者チームと民放連、加盟局が連携し、2006年に開始された。毎年、参加希望社を募り、あわせて13社が実施した。2006年度に、青森放送、中国放送、テレビ長崎の3社でスタートし、2007年度は北海道放送、山口放送、愛媛朝日放送が参加、2008年はチューリップテレビ、岡山放送、南海放送、2009年度は和歌山放送、九州朝日放送、鹿児島テレビ放送、そして、2010年度に文化放送が参加し、今年3月に5年間の活動を締めくくることとなった。
実践は、放送局員と子どもたちが協働で番組を作るプロセスを通して、子どもだけでなく、送り手自身もメディアリテラシーを学ぶようデザインされた。従来のメディア批判だけでなく、表現から入って学ぶことを重視し、放送というメディアに対してより深い理解を促すというアプローチをとった。
メディアリテラシーは、よく21世紀の読み書きにたとえられる。「読む」が批判的受容であり、「書く」は表現である。読みと書きは地続きでつながっている。批判と表現は、らせん的に循環し、鍛えられるもので、切り離すことができない。参加した子どもたちの満足度をみると、表現から入る方法は一定の成果をあげたと考える。
毎年シンポジウムやセミナーが開催され、個別の経験や課題は積極的に共有された。参加社によって事情は異なるものの、報告は、いまなぜメディアリテラシーなのかを明確に語るものであった。たとえば、「生活者の視点を確かめる手段になった」「自らの足元を見つめ直す契機となった」「地域ユーザーとの新たな関係づくりにつながった」などである。(これについては、『月刊民放』2009年9月号の特集、「地域から拓く」に詳しいレポートがあるので参照してほしい)
今回の取り組みには土台があった。2001年から2002年にかけて、加盟局4社で実施したパイロット研究、および、その成果をまとめた『メディアリテラシーの道具箱〜テレビを見る、読む、つくる〜』(東大出版会)である。多様で先端的な取り組み例が先行してあったことや、テキストとして「道具箱」があったことは、各社の取り組みに目標と言語を与え、価値を共有しやすかったと言える。
ただし、現実の取り組み過程は平坦ではなかった。個々のメディアリテラシーの解釈や価値の理解、局内の温度差、実践の方法など模索は続いた。研究者チームのコーディネートによる子どもたちと局員の協働作業という構図は、図式化すると簡単に見えるが、放送についての根源的な問いを含んでいた。
送り手は受け手に向けて一方的に情報を出すだけでいいのかというマスメディアの一方向性の課題。情報が消費されるだけで循環的に利用されない現状への疑問。送り手は、専門家として素人に知識を授けるという立場にとどまりやすく、そのために生じる市民との乖離。市民社会との対話の不在、断絶、これらの問題をどのように送り手が意識化、相対化できるかが問われたのである。
これらは、送り手のメディアリテラシーという文脈で議論された。しかし、放送全体では熟した議論とはなっていない。それどころか、不況のなかそんなことはやっていられないという本音の声も聞いた。おそらく、出発点が不幸だった。放送にメディアリテラシーが問われたのは、90年代に高まりをみせた視聴者からの批判を受けてのことである。あえて言えばその不幸を引きずることはないと思う。新しく生まれ変わることを目指すのなら、もっと積極的に、放送再生の鍵と理解したほうがよい。やってよかったと思える幸福なメディアリテラシーを目指してはどうだろう。
いま私たちは、マスと個人が引き裂かれていくメディアの現実を生きている。その相貌は、一方的に肥大するマスか、限りなく極私的になるか、その二極に分かれていく。それを主体的、意識的に超えようとしなければ、断面は広がるばかりだ。
メディアリテラシーがなぜ有効か。つなぐ力になるからだ。地域社会や学校を巻き込んでの取り組みは、不特定多数のマスから、特定少数の顔のみえる人々と直に向かい合う経験になる。放送はコミュニケーションの仕事である。コミュニティを考えることは、一般的な商行為とは異なるコミュニケーションの仕事を考えることに繋がる。
実践プロジェクトの経験は、参加局だけのものではない。先行例を参考に個別に実施できる。また民放連では、来年度以降もプロジェクトを継続して実施する予定と聞く。メディアリテラシーは、放送のグランドデザインを描くときの力やエンジンになるだろう。これまで参加した担当者から寄せられた感想が、そう確信させてくれる。

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2011/2/2 とやまフォト川柳、新たな展開へ

 2月2日(水)、大雪が続き飛行機や鉄道がストップするなか、奇跡的な晴れ間をぬって富山市へ到着。民放連メディアリテラシー実践プロジェクトのフォローアップというかたちでチューリップテレビでの講演会や打合せに、東京大学の水越伸、林田真心子が参加しました。
 同局の島倉正代表取締役社長と懇談させていただいたあと、今井喜義常務取締役をはじめとするチューリップテレビのみなさんをはじめ、富山県情報政策課や富山県教育委員会の方々、NPOインターネット市民塾、住民ディレクターの方々など約20名のみなさんの前で、「ローカルなマスメディアのゆくえ:メディアと市民の新しい結びつき方をさぐる」と題して水越が講演をさせてもらいました。

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 内容は、2010年度におこなった福岡、および大阪のセミナーに準じるものですが、とやまフォト川柳などの総合的な実践を進めてきたチューリップテレビ用に、よりバージョンアップをした中身としたつもりです。
 翌朝には、2011年度以降のメディアリテラシー、市民のクロスメディア実践の展開に関して関係者で密な打合せをおこないました。とやまフォト川柳は新たな展開していく予定です。どうかご期待ください!
(水越伸)
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2011/1/28 岡山放送(OHK)フォローアップ会合

 1月28日(金)の午後、民放連メディアリテラシー実践プロジェクトのフォローアップ会合として、岡山放送を訪問しました。岡山放送がこのプロジェクトに取り組んだのは2008年度。その後も同主旨の企画の再開を模索しているところです。そこで、2008年度の実践経験者を中心に今後の展開を話しあう、いわば実務的な会合がセッティングされました。
 お忙しい中、経験者全員が各部署から集まってくださり、さながら同窓会のようでした。さらに、当日になって急遽、飛び入り参加してくださった局員の方もいらっしゃったので(嬉しい悲鳴!)、今後のアイデア出しに先立って、飯田から民放連プロジェクトの趣旨や経緯などをお話しさせていただき、高橋誠さん(取締役営業局長)からは岡山放送がプロジェクトを継続することの展望を語っていただきました。
 民放連プロジェクトはこれまで、送り手と受け手の対話や協働、地域との連携を通じた放送局の体質改善などの実現をその成果としてきました。その重要性に関して全社的に深い理解があり、前向きな話し合いをすることができましたが、こうした営みが果たしてメディアリテラシーと呼べるのかどうか、放送局がメディアリテラシーに取り組んでいると表明すべきかどうか、議論の前提を共有するまでに時間がかかってしまったことは否めません。
 したがって、来年度の中核になるような企画を練ることができたわけではないのですが、いくつかの具体的なアイデアも浮上しました。ふたつだけ挙げておくと、

  • 小学校5年生の社会科見学を受け入れており、例年かなりの数の小学生に局内を見学していただいているので、一方的な説明だけで終わらず、局員と子どもたちとの学び合いのプログラムを考案する。
  • 飯田が勤務する福山大学に、岡山放送の現役局員の方々に「マスメディア論」の非常勤講師として、4月から来ていただくことになっています。そこでこの機会を活用して、講義の内容を局員のあいだで検証したり、反省を共有したりすることができるのではないかと考えています。

 これらはまだアイデアの種に過ぎませんが、まずは無理のないことから少しずつ実現できればよいと考えています。今後ともよろしくお願いいたします。

(飯田豊/福山大学)
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2010/12/31 文化放送メディアリテラシー実践特別番組

2010年度の民放連メディアリテラシー実践局である文化放送が、大晦日に特別番組を放送します。
関東の4つの学校の中学生が参加して行われたラジオ局での実践です。
ぜひお聞きください!
詳細はウェブサイトでhttp://www.joqr.co.jp/topics/release_20101116_2.php

文化放送 メディアリテラシー特別番組」
 放送:2010年12月31日(金)
 時間:午後8時〜
 実践参加中学:淑徳与野中女子5名、帝京中男女5名、茨城町立梅香中女子3名、 早稲田中男子4名
 案内役:武田鉄矢氏

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2010/12/6 青森放送フォローアップ報告

 2010年12月16日、青森放送のメディアリテラシープロジェクトのフォ
ローアップを実施いたしました。

 青森放送は2006年に公募型の民放連メディアリテラシープロジェクト
実践を行うようになった初年度に参加し、以降2010年に至るまで実践を
続けてこられました。
 こうした活動の継続ができたのは、青森放送の山内千代子さんをはじ
めとしたスタッフの皆さんの熱意の賜物ですが、それに加え県や弘前大
学と「あおもりメディアリテラシーネットワーク」を組織し、「人財あ
おもり丸」というテーマを設け、助成を確保してきた体制づくりの成果
でもあります。
 しかし、実践を始めて5年が経過、様々な面で見なおしが必要となり、
2011年以降はこのネットワークを一旦解散し、別の枠組みを現在模索し
ているという状況です。
             
 開通したばかりの東北新幹線で新青森へ。16日は朝からびっしりのス
ケジュールで、フォローアップを行いました。

9:30 報道制作局長と意見交換
10:00 一般社員約11名を対象としたミーティング&ワークショップ
   ※アナウンサー、テレビ制作プロデューサー、ラジオ制作デ
    ィレクター兼パーソナリティー、テレビ営業、テレビ編成、
    デジタルコンテンツ担当、技術、秘書室の方なども参加。
12:00 現プロジェクトメンバーとの意見交換
16:00 弘前大学にで、アドバイザーの児玉忠教授、サポーターの大
    学生・大学院生と意見交換
    「既参加者(高校生)の追跡調査」の報告 など
    
 全てのセッションにおいて「継続することの意義」そして「メディアリ
テラシーの意味するものの広がり」がテーマになっていったと思います。
その中でも特に私(水島)が意識して話をしたことは・・・青森放送の社
内ではどのように理解されているかは別として、自治体および大学とがっ
ぷり活動を支える組織をつくりあげてきたこの事例は、既に「青森モデル」
といわれるまで評価がなされている、ということ。それと、将来に向けた
継続のありかたを考えるとき、メディアリテラシー活動は「番組制作」に
止まるものではない、実際既にもっと広い意味が社会的に与えられつつあ
ることを踏まえる必要がある–この二点でした。

<午前中のミーティング&ワークショップ>
 一般社員11名+報道局長が参加され、実りがあるミーティングになりま
した。

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 はじめに、山内さんと一緒にプロジェクトを推進してきた星和明さんか
ら、この5年間の取り組みの報告と今年の概要が報告されました(約20分)。
そのあと水島が、11月に大阪で行われたメディアリテラシーフォーラムの
基調講演資料をもとに–「メディアリテラシー」は単に「子どもたち」が
「放送」を学ぶことに止まらない、むしろ危機に直面する「放送」が他の
新しいメディアと連携しながら、再び社会的な位置づけを獲得し、翻って
新しい社会のデザインに寄与していくためのコンセプトなのだ–といった
お話しを(約30分)しました。

 そのあとはワークショップ。手札サイズの無地の「情報カード」を、一
人9枚ずつ配りました。それを使って以下のカードを作成。
 ㈰星さんの報告の中で印象に残った点を3枚書く(「星カード」)、
 ㈪水島の話の中で印象に残った点を3枚書く(「水カード」)、
 ㈫参加者各人が考える青森放送が抱える課題を3枚に(「青カード」)
まず「星カード」を各自一枚ずつ出し、それに「水カード」の中でで関連
しそうなものを重ね(必ずしもくっつかないものは、バラで机の上に出し)
全部出切ったところで、さらに関連しそうな「青カード」を重ねていくと
いう、「UNO」というか「神経衰弱」というか「ババ抜き」というか–
集団KJ法のような遊びをしました。

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 これまでのメディアリテラシーで何をやってきたか(「星カード」)と、
現在のメディアリテラシー概念の動向(「水カード」)との関係、さらに
は青森放送の課題(「青カード」)と結びつけられることで、これまでの
活動で何が出来て、何がこれから必要なのか、そしてそれは青森放送の現
状と、どのように関係づけることができるかを、参加者全員で考えるとい
う体験したというわけです。
 継続はされてきたものの、これまで限られたメンバーだけで頑張ってき
たという実践自体の在り方を見なおし、もっと多くの社員が参加し、会社
と地域の「資産」にメディアリテラシー活動をランクアップさせていく–
これが、今後の青森放送に課せられた課題として見えてきました。
 この結果を踏まえて、星さんをはじめとした現メンバーほか、ワークシ
ョップ参加者数人と、これからの継続のあり方について話し合いました。
これまでの「人財あおもり丸」というテーマ、「番組制作」という手法を
超えて続けていくには、社員一人ひとりの負担を低く抑えながら、多くの
社員が参加できる仕組みを考えなければいけない。例えば、既存の各人・
各セクションのミッション(例えば具体的な番組、コーナー)の中に、メ
ディアリテラシーの要素を発見し、メディアと地域との関係を再構築する
という視点から「改善」を行う方法があるだろう、といったことなど。非
常に可能性のあるアプローチだと思いました。
 その点について報道局長は、「民放連プロジェクトの枠組以前に、もと
もと青森放送には、地域の視聴者と理解しあうための努力をするという遺
伝子があった。それが近年は薄れてきている」という問題意識を強く持た
れていました。話合いでは、これまでの体制にこだわらず、地元経済界な
どのサポートが得られるようにする必要性、さらには社内的には予算面の
保証などを考えるべきなどの具体策に踏み込んだ議論がなされました。

<夕方からの弘前大学での意見交換>
 その後場所を弘前大学に移し、児玉先生と、これまでサポートしてこら
れた大学生・院生たちとミーティングの場を持ちました。大学生たちは、
単に高校生の番組作りを傍からサポートしてきただけに飽き足らず、新た
に自ら番組作りにチャレンジしていました。まずその作品の観賞を通して、
振り返りを行いました。

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 大学生の体験から、これまでの「人財あおもり丸」の枠組みで何ができ、
何ができなかったのかが、明らかになってきました–大学生の(少し大人
の)視点でつくられた今回の作品は、「高校生」が出来る可能性と限界、
例えば”本当にこのプロジェクトは、青森の「人財」開発に貢献できてい
たのか”といった問いを浮かび上がらせました。
 さらに、これまでの5年間活動に参加されてきた「高校生+元高校生」
にアンケートを行い、それを卒論にまとめた学生から報告がありました。
アンケートは約8割という極めて高い回収率で、そこからはこの活動が彼
らの心に何を「学び」として残したかが見えてきました。それは地元「青
森」との結びつきを確認するという一言に集約されるかと思います。「高
校生」という時代にそのことを意識することの意味を改めて考えさせられ
ました。
 学生たちは、単に「お手伝い」をしていたのではなく、自分たちの問題
としてメディアリテラシーに向き合っていました。一人の大学院生(自ら
番組制作を行ったリーダー)は、4年間サポートを続けて来たと言います。
これだけ長い間プロジェクトと学生との絆を保ってきたのは、大変な努力
だと思いました。こうした環境を支えてくださった弘前大学の児玉先生の
ご尽力には、本当に感謝しかありません。
 弘前大学では、児玉先生のような教育学からのアプローチだけでなく、
社会学の先生方もサポートしてくださっており、メディアリテラシーを介
した産学連携のあり方などにも、その後議論は広がっていきました。単に
「放送」を学ぶメディアリテラシーを超えて、「放送の社会性」を地域と
ともに築くという課題を通じて、「社会」そのものを学ぶプログラムとし
てのメディアリテラシーの可能性が垣間見えた時間でした。

 とはいえ、現実は青森放送を始め、地域民放局は極めて厳しい環境下に
あり、こうしたこれまでの成果をいかに次のかたちの中に引き継いでいけ
るかについては、壁や制約も大きいのが現実です。したがって、こうして
少しでも見えてきた可能性をさらに拓いていくためには、まずは議論の流
れを止めないことが大切であることを感じました。メディアリテラシー実
践「青森モデル」の新しいステージでの発展を、これからも応援し続けた
いと考えています。

(報告:水島久光)

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2010/12/8 中国放送フォローアップセミナー「メディア・リテラシーの可能性―視聴者コンタクトマップ作り」

 2006年度の実践局である中国放送で2010年12月8日、フォローアップセミナー「メディア・リテラシーの可能性―視聴者コンタクトマップ作り」が開かれ、編成制作、報道、アナウンス、企画、広報、総務など各部署から16名の局員の方が出席しました。会の前半ではメディア・リテラシーの取り組みや考え方がどのように広がり、発展しているかについてのレクチャーを、後半には参加者が日常の業務の中から視聴者との接点を見つめ直し、メディア・リテラシーの活動に繋がる種を見つけ出すための簡易なワークショップを行いました。また、広島経済大学メディアビジネス学科の学生4名も参加し、大学生たちが抱いている広島の放送局のイメージについて意見交換する時間も設けました。
sDSCF5778.jpg●開催にいたるまで
 中国放送からフォローアップ参加の意向を受け、アドバイザーを担当することになり、どのような取り組みを行うかについて、今回窓口となられた総務の方らと数回ミーティングを重ねて検討しました。中国放送の場合、実践したのは4年前であり、当時担当された方がすでに退職されていること、子ども達とのビデオ番組制作など個人的な取り組みはあるものの組織としての活動は継続されていないこと、メディア環境もメディア・リテラシーの取り組みも変化していること、などからフォローアップと言っても、2006年度の実践の振り返りに重点を置くのではなく、実践後の時間を埋めつつ今後の展開に繋がる内容にしようということになりました。最終的には、そもそもメディア・リテラシーとは何かを改めて問いつつ、実践年度以降の取り組みがどう展開したのかについてのレクチャーと参加者の方に自分自身とメディア・リテラシーの接点を認識してもらえるような作業をすることにしました。
DSCF5793.jpg●メディア・リテラシーは「メディア文化を共に創造する営み」へ
 当日のレクチャーは「ソーシャルメディア時代のメディア・リテラシー」というタイトルで「メディア・リテラシー概念の発展と取り組みの広がり」「民放連プロジェクトの展開」「課題と展望」について話をさせていただきました。「視聴者の批判的な読む力」と捉えられていたメディア・リテラシーが、「送り手/受け手の読み書き能力」へ、さらに「メディア文化を共に創造する営み」へとその概念を発展させてきたこと、また、学校や放送局だけでなく、ミュージアム、NPO、商店街などと取り組む場、担い手も多様化していったことなどを話しました。また、民放連プロジェクトとしても、協働のミニテレビ番組作りに留まらず、ラジオコミュニティの再生を目指すものや広報活動と結びつけた新たな取り組みも行われており、さらに過去の実践局の中には地域の市民がメディアを活用、情報発信するための情報センターを運営する試みなどもあることを紹介しました。課題としては多忙な日常業務の中での継続や直接関わっていない人への浸透の難しさ、即効的な効果の伝えづらさ、などがあげられるものの、ローカル放送局が地域で放送を続けていく上で、それを受容する視聴者に向き合うことは肝要であり、視聴者と繋がり、共に地域を盛り上げていこうとする、また放送局自身が進化していくメカニズムとして、メディア・リテラシーは有効な概念であり、取り組みになる、と話しました。
sDSCF5807.jpg●視聴者との接点はどこに
 後半の「視聴者コンタクトマップ作り」では、それぞれの局員の方が視聴率ではなく、視聴者と顔を合わせる接点を見つめ直す作業を行いました。進行は中国放送の方が担当され、参加者全員が付箋にそれぞれの視聴者との関わりを記入し、それを発表しながらホワイトボードに貼り付け、皆で共有するという試みを行いました。取材相手、番組への視聴者参加、視聴者からの電話対応、放送番組審議会への出席、講演依頼、町内会の飲み会への参加、大学時代の恩師の授業で話す、など多岐に渡りましたが、分類すると「番組制作」「交流・ヒアリング」「視聴者対応」「社内見学」といった日常業務としての接点と、「講演・講義」「地域活動」「反応」という局員の社会生活も含めた接点が浮かび上がってきました。
sDSCF5809.jpg 特に意識していなくとも、視聴者との接点は多様にあり、整理して結びつけたり、一工夫して磨き直したりすることで、ともすると制作した番組を流す、視聴者の声を聞く、という回路が結びつかず言わば平行線のように交わらなくなってしまう矢印を輪のように結びつけ、相互理解に向けた視聴者との対話の回路を開いていけるのではないか、と思える結果となりました。こうした接点をどう具体的なメディア・リテラシーの取り組みへと結びつけていけるかという議論を丁寧に行う時間がなく非常に残念でしたが、それは可能だし、一人ひとりの日常の中にメディア・リテラシーの取り組みへのポテンシャルがあることが改めて感じられました。
●地域に根ざす放送局のこれから
 セミナーでは、事前に15名の学生に広島県の放送局5局、中国放送、NHK、広島テレビ、広島ホームテレビ、テレビ新広島のそれぞれのイメージをイラストと言葉で書いてもらい持参しており、出席した学生には直接説明してもらいました。ドラマやクイズ、お笑いなどがあがる他の民放局と比べ、中国放送は広島を取り上げる番組が多く地域密着で親近感がある、という意見が非常に多かったです。また、このイメージ比較に参加された局員の方々が非常に関心を寄せていられたのが印象的でした。
DSCF5801.jpg 時間が足りず叶いませんでしたが、個人的にはもう少し一人ひとりの局員の方の話を伺いたかったし、その先の議論から具体的な面白いアイディアが生まれてくるように思えました。今回の1時間半の短いセミナーで伝えられたことも理解いただけたことも限られているとは思いますが、広島の人々に根ざした実直な取材、番組制作を行っており、老舗で信頼の篤い中国放送であるからこそ、広島のメディア・リテラシーの牽引役となって、相互理解に基づく放送局と市民の関係の再構築、新しいローカル放送局のあり方をデザインしていって欲しいと願いますし、また可能であるだろうと期待しています。
(土屋祐子/広島経済大学)

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