08/8/4-6 チューリップ第4-6回ワークショップ

 富山のチューリップテレビは、本番の番組制作前の予行演習とでも呼べるワークショップを、8月上旬におこないました。ふつうの民放連プロジェクトの実践では、この予行演習だけで本番だといってもいいくらいのものだったといえます。服部さん、岩井さん、橋本さん、荒木さん、島田さんらを中心とするコアメンバーのみなさんがしっかりと計画をし、ていねいに段階を踏んでいらっしゃっることがよくわかります。
 一方で課題も出てきました。おとなしい高校生たちといかに関わっていけばよいか、改めてチューリップテレビにとってメディア・リテラシーとはなんなのか、そうしたことをきちんと整理する必要も出てきたようです。
 以下ではまず、8月4日から6日までのワークショップ全般についての服部寿人さんのレポートと、新人局員、島田美沙子さんのレポートを載せておきます。その後に、今後の進め方についての服部さんの短い文章と、水越のコメントをくっつけておきます。

(水越伸)



 私たちは前半の活動の仕上げとして、「農村のPRを作ろう」と8月4日から3日間連続の集中ワークショップを行いました。富山県氷見市の山あいにある久目という集落にバスで乗り込み、名物組合長さんの依頼(!)を受けて、チームごとに30秒のPRビデオ制作にチャレンジしました。1日目の様子は前回のレポートでお伝えしたように、おとなしかった高校生メンバーがいきなり元気に動き回るなど、私たちにとって新たな発見がありました。
 2日目(第5回WS)は編集作業。開放感ある砺波市の研修施設にパソコンを持ち込み、チームごとに作業にのぞみました。ここで、のちに局のコアメンバーに問題提起することになる出来事が…2日目8月5日の編集風景㈰.JPG
「前日撮影した映像に音声が入っていない!?」野山の自然の音をベースに編集しようとすすめていたあるチームの作業の手がとまりました。3人の高校生たちでしばらく話し合ったあと、ハンディカムを手に外に出かけていったのです。戻ってきた彼らが再び編集パソコンに向かって入れたのは、川のせせらぎの音でした。現場でとれなかった音、しかし、今ここにもある水の音。自分たちの思い通りのビデオにしようと考え、実行した行為にドキッとしました。2日目8月5日の編集風景㈪.JPG

(服部寿人)
 同じPRビデオを、チューリップテレビの新人局員、島田美沙子さんたちも制作しました。島田さんの感想レポートです。
 私は今回、スタッフとしてというよりは、高校生たちのライバルとして、今回のワークショップに参加しました。高校生と同じテーマでPRビデオを作る・・・。PRビデオなんて、作ったことがありません。絵コンテも書いたことがありません。しかし私には、何も出来ないくせに「テレビ局員」という肩書きがついています。きっとみんながそういう目線で作品をみることになると思います。それをプレッシャーに感じながら、「いいものを作らなければ」と秘かに意気込んでいました。島田美沙子.JPG
 しかし、案の定なんにも出来ません。
 大学院生の2人と一緒に知恵を絞るものの、耳に残るようなキャッチコピーも浮かばなければ、久目地区の魅力の中のどれに絞って伝えればいいかもわからず、30秒に収まりきらず、おもしろいアイディアも浮かばず・・・。
 さらに、すぐ傍らでは岩井大先輩がカメラを回して、そのダメダメな様子を記録しています。ますます焦ってしまった結果、結局D班(わたしの班)は高校生たちのどの班よりも遅い出発となってしまいました。
 結論から言えば、その後の撮影は楽しく進み、おもしろい映像も撮れたように思います。
 しかし、それはPRビデオに出演していただいた組合長様の素晴らしいキャラクターに完全に依存するところです。そして、いろんな案の中から1本に絞ったそのアイディアが、果たして最良のものか、久目の魅力が引き出せる内容のものなのか、未だに自信がありません。ただの自己満足、身内ネタで終わっているんじゃないか、とすごく不安に思います。
 こうやって振り返ってみて思うことは、わたしも高校生と一緒に学んだ1日だった、ということです。WSが終わった後に高校生にインタビューしたとき、彼らも同じようなことを感想として喋っていたことを思い出しました。PRビデオづくりの難しさを、経験することによってはじめて知ることが出来たと思います。
 とにかくここまで来たら、ライバルとしてやりきろうと思います。
他の班に負けない作品をつくります!!!

(島田美沙子)

 8月6日(水)、3日目のレポートに戻ります。

 8月6日(水)、第6回WSは3日間の仕上げ、ジャーナリストで市民メディア・アドバイザーの下村健一さんと東京大学の水越伸さん、メディア・エクスプリモのみなさんにも加わっていただき、福野町ヘリオスで作品発表会にのぞみました。メインの農村PRビデオの発表に加え、初期のワークショップで作った富山大学紹介リポートもあらためて視聴しました。さっと何気なく見た「駐輪禁止区域に自転車が置いてあります」という女子チームのレポートのワンシーン。下村さんの「あの自転車はあそこにあったの?」という問いに返ってきた答えは「いえ、別な場所から持ってきて置きました」
演出だからという高校生の論理に私はどう向き合うべきか、とっさに答えられませんでした。

(服部寿人)

■8/6 水越のコメント
 7月におじゃまして以来約一ヶ月、関わる高校生、放送局員、その他関係者のみなさんがどんな雰囲気で実践を進めているか、氷見のPRビデオがどんな感じでできたのかを楽しみにしながら、マス&コミュニケーションのメンバーである下村健一さんメディア・エクスプリモのメンバーである鳥海希世子さん、阿部純さん、稲葉莉奈さんと、福野町のヘリオスに駆けつけました。当日は、メディア・エクスプリモで進める“Keitai Trail !”という、ケータイ・ムービーを使ったワークショップの実験もやらせてもらいました(そのために、三度笠姿のヘンな格好で写真やビデオに撮られてしまった・・・)ここでは思ったこと、感じたことの要点を箇条書きにしておきます。3日目8月6日上映会㈰.JPG
○まず感じたことは、砺波高校と福野高校のみんなのビデオ制作能力が著しく高くなっていると言うことでした。一番最初に機器の操作になれることを目的として、富山大学構内でビデオ制作をおこなっていて、そして今回の久目のPRビデオ制作だったのですが、その出来のちがいはとても大きかった。たいしたものだと思いました。
 すごいぞ、高校生!
○ビデオ上映の後、下村健一さんからとても鋭く、ためになるアドバイスが富んでいました。下村さんはマス&コミュニケーションのメンバーであり、なんだか身内をほめるようでなんですが、目の覚めるようなコメントでした。さすが!下村さんがくり返しいっていたことは、見る人の立場に立ってビデオづくりをすること、その思いやりの大切でした。これはそのまま、プロのひとたちにも突き刺さる言葉だと思いました。
○辛口のことも言っておくべきですよね。
 上映会の進行やデザインが全般にマジメすぎ!ともすればプロの局員からおとなしい高校生へ向けての一方向のコメントになってしまっていました。中途で砺波高校の江守恒明先生(情報教育実践でご活躍で、とてもお茶目な先生!)がいらっしゃったらとたんに盛り上がったりしたのは、ある意味でその証拠かと。高校生たちの気持ちや意見をうまく導き出したり、放送という社会的に責任がある活動をするのだという自覚をうながしたりする必要があるかと思いました。
3日目8月6日上映会㈪.JPG
 いずれにしても・・・
 高校生のみんな、がんばれ!
 これはチューリップのプロにビデオ制作を教えてもらうワークショップじゃない。「対話と対決」の機会です。しっかり意見を持って、楽しく進めていきましょう。

(水越伸)

■今後に向けての服部談
 三日間のワークショップを終え、お盆を迎えた後、私たちは後半の番組づくりのテーマをどうするか、進め方、高校生との接し方をめぐって壁にぶつかりました。そんな中、「これまでの活動をコアメンバーだけで、ざっくばらんに話しあってみませんか」との提案があり、8月25日(月)に会合を持ちました。
“われわれにとってのメディアリテラシーって本当はどういうことなのか”
“私たちコアメンバーにどんな”気づき”があったのか”
 シリアスな部分をもう一度話しあうべしという中堅社員の問いかけで、前述の2つの問題についても議論を交わしました。
 高校生が行った”演出”や音の代用―それぞれ自分のものさしで主張しあいましたが、「理屈をいろいろ並べたところで、テレビはこうした手法を使っていると思われているんですよね」とのメンバーのつぶやき。”気づき”を得ていたのだという安堵と、高校生と問題を突き詰められなかったことに対する自責の念が交錯しました。同時に「そうではないんだということを高校生たちに気づいてもらいたい」「あの問題は、高校生たちととことん議論するべきだった」「チューリップテレビのメディアリテラシーは、そんな活動であるべき」そんなメンバーたちの声に勇気づけられました。
 8月30日からはじまる高校生たちとの後半の活動、番組を作ることではなく、互いに学び気づきあう。今一度自分たちの足元を見つめなおしたことは意味がありました。

(服部寿人)

 高校生たちのコメントです。
第4回・8月4日
・ 久目地区の自然と特産物をいかに分かりやすく伝えるかを考えました。おばあさんの親切に感謝。(男子)
・ 羞恥心。人間やればできると思った。最初はアイディアも何も浮かばず、だらだらした感じでしたが、一応まとまって何本かとれたので良かったと思う。CMってたいへんだと思いました。構想を考えるのは大変でしたが楽しかったです。組合長最高☆メディアリテラシーTシャツ、色落ちしませんかね。(女子)
・ 素材をとってまわるのはとても疲れた。内容が決まっていない状況では何を撮っていいのか分からず苦労した。はじめから入れようと言っていたもの以外は手当たり次第にとった。15分もとったから編集がたいへんそうだった。(男子)
・ 暑かった。どんな方向性で作るかも、なかなか決まらず大変でした。いろいろまわってカメラ回すのは楽しかった!Tシャツの洗濯たいへんです…(女子)
・ 映像の見せ方でも、固定と歩いているので違うこと。アングルの違いでも映像の見え方が違う。キャッチコピーを考えるのが難しかったが、絵コンテを描く事でまとまりやすくなった。組合長はハイテンションなマシンガントーカーだ。
第5回・8月5日
・初めて編集しましたが、編集は面白かった。
・映像を撮っているとき、動かすとカクカクになる。滑らかにするにはどうすれば良いのだろう。(女子)
・とても難儀した。撮った映像には絶対いらない素材もあったが、それでも多かった。(男子)
・30秒という枠は長いのか短いのか、あいまいだった。ナレーションも入れてなんとか形にすることができた。(男子)
第6回・8月6日
・ 久目というテーマの中、どれも違う作品ができていた。何もないといった所で、これだけの映像が撮れているとは思ってもいなかった。(女子)
・ 伝えるということと、わくわくすることが大切だという話が心に響いた。サウンド賞をもらって、チームの男子2人に本当に感謝したい。(女子)
・頑張った作品を評価してもらってうれしかった。ほかの班の作品も本当に良く出来上がっていてすごいなと思いました。(女子)
・ プロの視点からの放送にとって大切なことについて聞けたことがよかった。思いを伝えることが大事。(男子)
・ ほかの班のを見て、「ああ、こういう方法もあるんだなあ」と思った。審査員の方々の意見も参考になりました。テレビの枠にとらわれない…ムズカシイですね。次はイヨイヨ3分、がんばろう。
(服部寿人:08年9月14日追加)

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