2010/8/6 KTS「夏休みテレビジャック」今年も!

2009年の民放連メディアリテラシープロジェクトの実践局、鹿児島テレビ(KTS)
が、今年も継続して実践を行いました。マス&コミュニケーションのメンバー
からは水島久光が、昨年の実践のサポート担当者としてフォローアップに伺い
ました。以下、メディアリテラシー活動を続けていく独自の意義と方法を模索
しながら頑張っている鹿児島テレビの様子を(少しご報告が遅くなりましたが)
レポートします!

  s-ZOOMロケハンJR.jpg  s-ZOOM編集.jpg

タイトルは「KTSメディアリテラシープロジェクト・夏休みテレビジャック」。
実践期間は、昨年と同じ6日間。7/30-8/1+8/4-6と、途中一週間あいだをあけ
た昨年よりもさらにコンパクトな日程となりました。

<日 程> 7月30日(金) 社内見学、ワークショップ「記者会見」など
      7月31日(土) 番組のつくり方、撮影、編集のワークショップなど
             (実際に撮影、編集して1分程度のビデオをつくる)
      8月01日(日) 企画、ロケハン、絵コンテ
      8月04日(水) 取材
      8月05日(木) 取材、編集
      8月06日(金) 編集、試写会、修了式
      9月上旬    プチ同窓会(合評会)

基本的な考え方、進め方は昨年と同じ。県内の中・高校生を対象にWebや番組
参加者を公募し、グループに分かれてテーマに沿った番組を制作するという
もの。参加生徒も、昨年同様、家族や本人と担当者が事前にしっかり話をして
互いに理解を深めた上で決定しました。

昨年は初めての企画ということもあって66名という驚くべき数の申込があっ
たのですが、今年は32名。やはり圧倒的に中学生が多く、男女比も昨年同様
女子がほとんど。その中から今年は昨年の半分の2チーム、10名を選びまし
た(チーム名は、「ZOOM」と「Hey!Say! Rainbow Girls」)。正直もう少し
応募者が欲しかったところですが、やはり夏休みとはいえ、忙しい中高校生
の時間を、連続一週間ひとつのことに割くことの難しさがあるようです。

2チームにしたのは、確保できた機材の数によるものですが、結果的に見れば、
昨年(4チーム)に比べて、子どもたちをきめ細かく看ることができたように
思います。また二チームとも、昨年の方法と変えて、高校生と中学生の混成チ
ームにし、同一中学4名を2+2に分けるなど、年代や学校の組み合わせが、
どのように子どもたちのコミュニケーションに影響するのか、見ていくことに
しました。最初はやはり高校生が引っ張り、中学生の発言が少ないなどの問題
が見らたようでしたが、最後の二日間は、両チームとも中学生の頑張りが高校
生を助けるシーンが目立ったように思います。

一日目、二日目の内容は、「詰め込みすぎ」「中学生の、状況適応のスピード
を考慮する」などの昨年の反省を活かし、大幅に組み直されていました。特に
初日に、なかなか子どもたち同士のコミュニケーションがスムーズにいかない
問題があったのですが、今年は「話合い」の前に、アイスブレーキング的に写
真を撮りあう「作業」を入れ、これが功を奏しました。また社内見学の後に新
たに設けた、「記者会見」シミュレーションが成功。取材者によって会見内容
の切り取り方に違いが出ることなど、比較的早い段階でメディア・リテラシー
らしい「気づき」感覚に子どもたちを引き込むことができたようです。

  s-構成.jpg  s-レインボー農家取材.jpg

昨年、局スタッフが最も悩んだのは「子どもたちとの向き合い方」。しかしこ
の点については、リーダーの松元さんほか、昨年経験をした社員と大学生を中
心に、かなりの進化が見られました。「教え込む」のではなく、また逆に「や
りっぱなし」にもさせずに、上手に子どもたちの作業やコミュニケーションに
介入して、「考えさせ」「決断を促す」働きかけがうまく行ったように見えま
した。プログラムの進行にやや気をとられていた昨年に比べると大きなの差。
ここに余裕が生まれたことによって、「視聴者をイメージすること(放送は、
単なるビデオ制作ではない。きちんとメッセージを相手に伝わるかたちで発信
すること)」を、かなり早い段階から、子どもたちに意識づけできたように思
います。その証拠に、子どもたちの振り返りシートにも「視聴者」という言葉
が数多く書かれていました。

今年は「感謝」が2チーム共通のテーマ。しかし、このテーマのもとに、どん
な「メッセージ」を伝えるか–この点に子どもたちはかなり悩んだように見え
ました。取材が進むうちに、その対象の面白さ(JR鹿児島中央駅駅と映画館、
環境未来館と農業体験)に引っ張られて、「テーマ」を忘れ、単なる取材先の
紹介ビデオに終わってしまいかねない危機に、最終日を前に直面しました。
そこでなんとか踏みとどまることができたのは、ナレーション原稿作成を丁寧
に行ったから。一つひとつの言葉を選びながら、当初のテーマを思い返し、そ
こからもう一度全体の構成を考え直すことができ、なんとか最終日午前中には、
テーマに沿った一本のストーリーを組み立てるところまで辿りつけました。今
回最も子どもたちが「脳みそに汗」をかいた時間だったように思います。

しかし子どもたちは一旦フリーズしはじめると、なかなか動きをとりもどせま
せん。もちろんこのように「締切」にあわせて時間管理を行う経験はないので、
仕方ないのですが–周りを囲む大人たちは、最後まで「冷や汗」をかきました。
特にこの鹿児島テレビの実践は、放送に対する責任意識に気づいてもらうこと
も狙いに含め、「時間厳守」を掲げています(昨年は、そのために完成できな
いチームもありました)。今回は、2チームとも滑り込みセーフで、なんとか
達成感を与えてあげることができましたが、最後の1時間は「料理の鉄人(古
い!)」なみの、かなりの緊張感でした。

フォローアップに伺って感じたことは、この鹿児島テレビのチームは、かなり
「自分たちなり」のメディアリテラシー実践の「あり方」を掴みつつあるとい
うこと。しかしそれだけに、今後どうしたら安定的にこの事業を続けることが
できるだろうかが議論になりました。いまのところ社内の理解はかなり得られ
るようになってはきていますが、それでもかかる経費と社員の業務負担の問題
は大きく、実践を支える資金、体制、さらには経営戦略における積極的な位置
づけがなされるべきなど、課題は山積していると言えます。

ともあれ今年も大成功で、さらに一歩階段を上った感はありました。最終的な
評価は、8月30日14:00〜の番組OAを踏まえた9月の合評会で、少し距離をと
った眼差しで子どもたちが、どう自分たちの学びを振り返るかを見てからとい
うことになりますが。なによりもこうしたプロジェクトは「継続してこそ価値
がある」ということを実感しました。なんとか今後も実績を重ね、新しい放送
を介した地域づくりの活動として根付いていくことを期待しています。

(報告:水島久光)

*昨年のレポート

マス&コミュニケーション

*KTS鹿児島テレビ(2009年の取り組み)

http://www.kts-tv.co.jp/company/literacy/index.php

*2010年 番組のお知らせ

http://tvinfo.ktstv.net/e18681.html

  s-集合写真.jpg  s-試写会2.jpg

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