9/4-5 メディフェス・ネビュラのからくりと意義

ネビュラのからくりと意義:どうやってできていて何をめざしているのか

 メディフェス・ネビュラに参加登録いただき、どうもありがとうございます。
 約40のグサッときたりグッときたりする質問に答えていただくと、「越前屋」「アリさん」などといったあなたのキャラクターが表示されましたよね。それから関係図のなかに、まるで天球儀のなかの星のようにしてあなたの活動が表示されましたよね。
 ネビュラをどのようなからくりでやっているのか、そしてその意義はなにか。そのあたりを概略説明しておきます。0001SL.jpg
1.からくり
(1)約40の質問は、武蔵野・三鷹メディフェス実行委員会のみなさまとメディア・エクスプリモメル・プラッツのメンバーが協力してこしらえました。
 中心的にがんばったのは水島久光さん、見城武秀さん。
(2)「自信がある←→悩み深い」「恵まれている←→恵まれていない」「かっちり←→ゆるゆる」「このまま進もう←→チェンジ!」という4つの軸は、市民メディア、ワークショップ、メディアリテラシーなどの実践経験豊富な関係者が、質問項目を考えるなかで経験則に基づいて話し合って決めました。なにか統計科学的に出てきたものではない、つまりデジタル・コンピュータじゃなくてアナログ・カンピュータで見出しました。
(3)それぞれの質問と4軸の関係をあらかじめ表のように決めました。
 たとえば質問5「ぶっちゃけおかねがほしい」の場合。00017Q.jpg
 「自信がある(+)←→悩み深い(−)」軸でいえば、「ぶっちゃけおかねがほしい」と思う人は「悩み深い」と位置づけています。つまりこの軸では「−」の側だと。
 「恵まれている←→恵まれていない」の軸でいえば、「ぶっちゃけおかねがほしい」と思う人は「恵まれていない」の側、つまり「−」の側。
 「かっちり←→ゆるゆる」軸でいえば、「ぶっちゃけおかねがほしい」と思う人は「カッチリ」しているだろうということで「+」の側。
 「このまま進もう←→チェンジ!」軸でいえば、「ぶっちゃけおかねがほしい」と思う人は今の状態に満足していないはずなので「チェンジ!」の側、つまり「+」の側。
 
(4)以上のような位置づけを関係者みんなで話し合ってきめ、すべての質問について4軸それぞれでの位置づけ(関係性)をあらかじめ決めておきました。
 ちなみに表で空欄の部分は、その軸では位置づけられない場合です。たとえば質問9「飲み会の方が盛り上がる」は「自信がある←→悩み深い」のどちらともいえない、いいかえるとこの軸では計れないので、空欄にしてあります。
(5)さて、このような関係性が設定された約40の質問に「はい」「いいえ」「どちらでもない」のいずれかに答えてもらう。そうすることでその人(の活動)は4軸の交差する中である一定の位置を取ることになります。いわば天球儀のなかの星のように場所が定まるわけです。
 星のおたがいの位置関係は数値化された情報をかなり正確に反映しています。ただしあとで説明するとおり、どういう軸をどこに引くか(星がどの象限にあるか)はかなり恣意的に設定されています。
2.その意義
(1)市民参加型の技術システム
 ネビュラの中核には、いわゆる知識支援システム、創造支援システムと呼ばれるものがあり、これは工学系研究者が作っています。これはプロの領域です。
 しかしネビュラはそれだけで成り立っていません。参加者の情報を入力してもらう部分、情報をどのように位置づけるか、価値づけるかという部分については、これを活用しようとする一般の人々がつくっていくべき領域です。
 たとえばある地域で問題となっていることがらをめぐってアンケートをやり、その結果を重層的に可視化し、住民みんなで意見の拡がりを見ながら議論を深めてみる。地域の問題というのはたいてい歴史や政治やいろんなことが複雑に入り組んでおり、そんなに白黒はっきりさせることができない場合が多いですよね。それなのにたとえばテレビの短いニュースでは白黒、つまり賛成反対に分かれて戦っているように描かれてしまったり、住民が自分たちでもそのように単純化して考えてしまったりする。そんなときに、複雑なものを複雑なままに、重層的に可視化し、みんなでそれを眺めながら考えてみるための道具に、ネビュラはなるでしょう。
 あるいは入学まもない学校の子どもたちがたがいに仲良くなるための道具としてつかってみる。たとえば5つのユーモラスな質問に答えると自分がネビュラに位置づけられ、それらをネタにしながらみんなで仲良くなってもらう。いわゆるアイスブレイクの道具にしてもらうこともできるでしょう。同じことは会社の入社式、シンポジウムやキャンプで参加者が打ち解けるためにはもってこいだと思います。
 いずれにしてもネビュラは、プロの技術者がつくり、素人は手が出せないブラックボックスではなく、入力的な部分を市民参加型でつくり、それぞれのやり方で活用できるホワイトボックス(?)です。基本キットをそれぞれのしかたで改造、応用できるともいえる。市民参加型の技術システムであり、それを活用するための文化プログラムは自分たちがつくっていける。そこに特色があります。
(2)文化のプログラムもホワイトボックス
 どういう質問をするか、どんな軸に位置づけるか。
 くり返しいえばそれらは統計科学や社会心理の専門家が決めるのではなく、ネビュラを活用しようとする団体や組織、共同体のメンバーみんなで考えることができます。もちろん専門家やいろんな人の意見を聞きながら進めてもよいですが。
 質問と軸は、そういう意味では主観的な産物です。しかしそれらは、誰かわからない人が勝手に決めて押しつけられるといったものではなく、自分たちで納得しながらつくることができす。しかも主観的ではあるけれど、それをみんなで話し合ってチェックし、なるべく公平なものにしていく、つまり主観的客観性を持ったものです。
 これは技術のブラックボックスと同様に、企業やマスメディアのマーケティングに知らず知らずのうちに載せられ、利用されてしまうような文化プログラムのブラックボックスに対抗していくためのひとつの戦術であり、見えないメディア資本に利用されないためのメディア・リテラシーをひとつの活動だということもできると思います。
(3)ネビュラの今後
 ネビュラはまだ、夢想の途中にある仕組みです。今はまだ、個別に参加者が入力をして、おおぜいで天球儀をみるようなことしかできません。しかしそれはネビュラのひとつのあらわれに過ぎないと考えています。別のバージョンがあり得る。SN3J0110.jpg
 たとえば個別のグループやワークショップにとってもっと具体的に役立つ道具や材料、ノウハウなどを、スイスアーミーナイフとか道具箱みたいなものとしてパッケージ化して役立てられないか。
 あるいは個人がそれを使って歴史的な系譜をたどったり、なにかを深く調べたりするためのアーカイブ(ただしとても柔軟で動的なアーカイブ)として使えないか。
 ゲッターロボが3パターンに変形できるみたいな(わかる人にしかわからないでしょうが・・・)。「ぬえ」のようなものだともいえます。
 これから僕たちは、今あるネビュラとはちがうネビュラを夢想し、デザインし、実践していこうと考えています。

(水越伸)

 

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