実践をめぐるエッセイー”Keitai Trail !” in Ars Electronica Vol.1

taking over:
リンツから帰ってきて早3週間が経とうとしています。
初めて行った場所で、慣れない言語を使って、さまざまな国の方と交流する。12日間というけして短くない滞在期間でしたが、あらゆることがあっという間に過ぎていったと感じたということは、それを楽しんでいた何よりの証拠なのだと思います。この5月からワークショップの準備が始まり、さらに言えば、これの前身となるようなワークショップを昨年度から始めていて、これらの長い長い”トレール”の延長にアルス・エレクトロニカ出展がありました。いまなおこの”トレール”は次の歩みを始めつつありますが、今回は少し時間をもどしつつ、”Keitai Trail ! “にて250ものストーリーを生み出した「モノ」について話をしたいと思います。
私は以前、「お守りプロジェクト―人は何をお守りとして携帯するのか―」というワークショップを行ったことがあります。これは、自身の携帯物を「実用度」と「依存度」の4象限に分けた紙の上に配置し、携帯物を客観視しながら、私たちは何をよりどころとして日々過ごしているのかについて再考するものでもありました。
私自身、このお守りワークショップの面白さは、普段あまり気にとめない「携帯物」に着目したことにあると考えています。モノは言うまでもなくその機能性や象徴性で選ばれ、所有者によってカスタマイズされることもしばしばです。モノは云わばその人の行動や生活の縮図となって、あらゆる経験をともにしているのです。そしてさらには、私たちは”Keitai Trail !”の中で、江戸時代の旅人の装束で歩きまわりましたが、社会的文化的な背景とともに、モノはその特性を個人の属性とはまた別の次元で、脈々と更新し続けてもいるのです。「携帯物」は何かの記念品とは異なり、日々の主人公にはなりがたいところがあります。その日に使うかどうかは別として何となしに持っているものや、自分なりのこだわりを持っているものなど、ともすればさらさらと流れる時間とともに流されていきそうなモノから自分自身を振り返る、”Keitai Trail ! “をきっかけに日常を捉えなおしてみる。何気なく持っているモノが、なぜ今日持っているかというだけの前後の文脈によって物語の主人公になりうるという点、そしてこの点から「携帯物」が、鞄の中に隠し持っている非常に”個人的な”モノ”から、社会的な接点としての語り口を持つモノにもなりえるという面白さが、これらのワークショップには潜んでいると考えています。
モノについて語ること、それは自分のアイディアや日々のことについて語ることであります。いろいろな人たちが主役となったそれらの物語を集め俯瞰することによって、個人に集約されない現代のモバイル・コミュニケーションのありようがありありと描かれ続けます。ケータイという私たちにとってとても身近な、他のどんなモノよりも立て続けにその機能を増加・刷新し続けているメディアで、「携帯物」ストーリーを撮りためていく。ケータイでここまでできるのかというある種の「違和感」は、私たちのメディア環境を考える上で非常に有用な感覚であり、メディア史の一つのトピックにもなりうるものです。そして、このケータイのおかげもあって、撮る方にとっても撮られる方にとっても非常に「身軽な」ワークショップになったのでした。(もちろん、弥次喜多装束はこの夏には暑かったですし、準備や片付けは大変でしたが…!)
“Keitai Trail ! “では連想ゲームのようにして、前後の人たちとのつながりを意識した仕組みをとっています。夏らしいお題の”something makes you cool”から始まり、”something necessary”まで、トレールはつながってきました。今後どのようにこれらのトレールは引き継がれていくのかを考えるためには、次のフレーズを埋める必要があります。
“Keitai Trail ! ” is something to discover possibilities of collaborative media expressions among general people, and also something ???
(文責:阿部純)

この記事はKeitai Trail !, topicsに投稿されました. このパーマリンクをブックマークする。 コメントを投稿するか、トラックバックをどうぞ: トラックバック URL.

コメントする

あなたのメールは 絶対に 公開されたり共有されたりしません。 * が付いている欄は必須項目です

次の HTML タグと属性が使用できます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

*
*