2010/11/26 大阪メディアリテラシー・フォーラム報告

 11月26日(金)、民放連メディアリテラシー・フォーラムが大阪・関西大学で開催されました。6月の福岡に続いて2回目の開催です。放送局関係者や研究者、市民団体の方など50名ほどが参加しました。

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冒頭の基調報告では、東京大学大学院情報学環の水越伸氏より、これまでの民放連プロジェクトの枠組みや射程を振り返り、今後を展望する話がありました。林田からは、2001年に始まった民放連メディアリテラシープロジェクトの参加者へのインタビューをもとに、その成果や課題を報告しました(文末の論文参照)。

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その中で、水越氏は、今後、メディアリテラシープロジェクトが展開していく方向性を「マーケティング&メディアリテラシーへ」「学校・大学連携型」「公共施設連動型で地域に根ざす」などカテゴリー別に具体的に提示。それをもとに、参加者ディスカッションでは次の3つにわかれ、実際に携わる経験者からの報告が行われました。
1)クロスメディア市民参加型のメディア遊びへ(チューリップテレビ・服部寿人氏、東京大学大学院・鳥海希世子氏)
2)お客様サービス&CSR&体質改善のために(テレビ朝日・上野敦史氏)
3)海外の取り組み:すごい!台湾のメディアリテラシー(マルチメディア振興センター・劉雪雁氏)

今回は、前回(福岡)に比べて、人数も比較的少なかったせいか、それぞれの取り組みの目的や仕組み、予算や課題、局の体制など悩みについてなど、より詳細な質問が投げかけられていたように思います。それに対し、丁寧なやりとりが続きました。

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最後のパネルディスカッションでも、プロジェクト実践者の悩みや課題が率直に報告されました。2001年にはじまった「民放連メディアリテラシープロジェクト」今年で10年目を迎えました。その活動は大きくはなくても、しっかり、確実に広がっていることを、参加された方々の声から実感します。一方で、実践する放送局の方々の悩みはそれぞれに変わらずあり、孤軍奮闘しながら実践を継続している局員の方も少なくありません。前回の福岡に続いて、今回も、そうした「送り手」の生々しい声が聞かれました。その切実な声は、単に、民放連プロジェクトを継続する課題や困難を示しているだけでなく、現在の放送の状況を率直に捉えた示唆であり、望ましい放送の未来を描くための問題提起しているといえます。
なお、民放連メディアリテラシープロジェクト参加者へのインタビューについては、東京大学大学院学際情報学府紀要(NO.79 2010:65-87)「送り手のメディア・リテラシー:民放連プロジェクト実践者へのインタビューから」に詳細を記しています。東京大学大学院情報学環紀要

 (報告:林田真心子、撮影:劉雪雁)

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2010/11/26 大阪メディアリテラシーフォーラム速報!

民放連メディアリテラシーフォーラムin OSAKAが終了しました!あわせて50人近い方々に参加していただきました。放送局の方だけでなく、研究者やNPOの方と、今回も様々の方にお越しいただきました。多くの皆さんとざっくばらんに意見を交わした福岡での会とはまたひと味違って、参加者ディスカッションではじっくりと議論を重ねられたように思います。福岡の会ともあわせて、改めてご報告をさせていただきます!
参加してくださったみなさま、ありがとうございました。

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2010/11/26 大阪メディアリテラシー・フォーラムご案内

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メディアと市民の新しい結びつき方をさぐる
:民放連メディアリテラシー・フォーラム in Osaka
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このままで日本の放送はどうなってしまうのか。
そのように危ぶむ声は後を絶ちません。しかし一方で、地域の人々との交流を図り、
ケーブルやネットなどさまざまなメディアと協力しながら、ローカルメディアとして
新たなビジネスモデルを画策している放送局も少なくありません。
番組づくりを通して送り手と受け手がともにメディアリテラシーを学び合う。
それによって地域に根ざした参加型の放送局のあり方を模索する。
2001年にはじまった「民放連メディアリテラシー・プロジェクト」はそんな目的を
持って展開し、今年でのべ19局が実践をおこなってきました。
このフォーラムでは、ローカル民放で働く人々と、地域の学校、社会教育、大学、
自治体、NPO関係者などのみなさんにぜひお集まりいただき、
メディアと市民の新しい関わり方、結びつき方を一緒にさぐることができればと
思っています。
先だって9月に開催された福岡フォーラムには、約90人が参加。
そこで交わされた意見や声もひきつぎながら、新たな内容で展開します。
福岡フォーラムでは紹介されなかった実践もご紹介しますので、
重ねてのご参加も大歓迎です。
深秋の大阪でお会いしましょう!ぜひお気軽にご参加ください!
■日 時 :2010年11月26日(金)午後1時30分〜午後5時
■会 場 :関西大学千里山キャンパス 第三学舎D301教室
         大阪府吹田市山手町3丁目3番35号
         http://www.kansai-u.ac.jp/global/guide/access.html
■プログラム:
13:30〜14:20 基調報告「放送を市民的に『新生』させるために」
         水越 伸・東京大学大学院情報学環教授
         林田 真心子・東京大学大学院学際情報学府博士課程
14:30〜16:00 参加者ディスカッション
        (マス&コミュニケーションプロジェクトメンバーによるミニプレゼンテーションなど)
16:00〜17:00 パネルディスカッション
         パネリスト 花井歩高・和歌山放送(予定:2009年度実践局)
               服部寿人・チューリップテレビ(予定:20008年度実践局)
               水越 伸・東京大学教授ほか
         司会 本橋春紀・日本民間放送連盟
*終了後、懇親会(会費制)を予定しています。
■参 加 費  無 料
■参加申込み
氏名、メールアドレス、所属をご記入のうえ、民放連番組部あて、
電子メール「tvkids @マーク nab.or.jp(@マークを半角@に変換してください)」にて
11月19日(金)までにお送りください。
なお、参加証などは発行しませんので、直接会場にお越しください。
■主催:
東京大学大学院情報学環 水越伸研究室「マス&コミュニケーションプロジェクト」
/
民放連 放送基準審議会
http://www.nab.or.jp/
■協力:メル・プラッツ http://mellplatz.net/
翌日の27日には、同じ大阪でミュージアムをテーマとした
メルプラッツ公開研究会が開催されます。
こちらも合わせてのご参加をお待ち申し上げます。詳細は下記でご確認ください。
http://mellplatz.net/info/000237.php
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9月に開催された福岡フォーラムのもよう

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2010/9/24 民放連プロジェクト福岡フォーラム終了

日本民間放送連盟とマス&コミュニケーションプロジェクトの共催で行われた
「メディアと市民の新しい結びつき方をさぐる:民放連メディアリテラシー・フォーラム in Fukuoka」が終了しました。
放送局関係者やNPO、研究者、過去の実践に参加した子どもたち(当時は小学生、今は高校生)など、のべ90人ほどの皆さんが集まり、会場は満席になるほどでした。
はじめて、民放連メディアリテラシープロジェクトに関する報告や話を聞かれた方も多く、率直な意見や、新しい発想もいろいろととびだしました。詳細は、改めて、報告したい思います。まずは、参加された皆さん、本当にありがとうございました。
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2010/9/24 福岡メディア・リテラシーフォーラムのご案内

メディアと市民の新しい結びつき方をさぐる
:民放連メディアリテラシー・フォーラム in Fukuoka

 このままで日本の放送はどうなってしまうのか。
 そのように危ぶむ声は後を絶ちません。しかし一方で、地域の人々との交流を図り、ケーブルやネットなどさまざまなメディアと協力しながら、ローカルメディアとして新たなビジネスモデルを画策している放送局も少なくありません。
 番組づくりを通して送り手と受け手がともにメディアリテラシーを学び合う。それによって地域に根ざした参加型の放送局のあり方を模索する。2001年にはじまった「民放連メディアリテラシー・プロジェクト」はそんな目的を持って展開し、今年でのべ19局が実践をおこなってきました。
 このフォーラムでは、ローカル民放で働く人々と、地域の学校、社会教育、大学、自治体、NPO関係者などのみなさんにぜひお集まりいただき、メディアと市民の新しい関わり方、結びつき方を一緒にさぐることができればと思っています。
 初秋の福岡でお会いしましょう!ぜひお気軽にご参加ください!
■日 時  9月24日(金) 午後1時30分〜午後5時
■会 場  天神クリスタルビル Aホール
福岡市中央区天神4丁目6-7、電話:092-733-2681
地下鉄天神駅から徒歩7分、福岡中央郵便局から徒歩2分
http://www.ohi-pm.jp/rental/hall01.html#
http://www.ohi-pm.jp/rental/map_crystal.html
■プログラム 
13:30〜14:20 基調報告「放送を市民的に『新生』させるために」
水越 伸・東京大学大学院情報学環教授
14:30〜16:00 参加者ディスカッション(課題をめぐるグループワークなど)
16:00〜17:00 パネルディスカッション
パネリスト 徳永謙太郎・山口放送(2007年度参加局)
         松元修二・鹿児島テレビ放送(2009年度参加局)
         水越伸 ほか
     司会 本橋春紀・日本民間放送連盟
*終了後、懇親会(会費制)を予定しています。
■参 加 費  無 料
■参加申込み
氏名、メールアドレス、所属をご記入のうえ、民放連番組部あて、電子メール tvkids @マークnab.or.jp(@マークを半角@に変換してお送りください)にて
9月15日(水)までにお送りください。
なお、参加証などは発行しませんので、直接会場にお越しください。
■主催:
東京大学大学院情報学環 水越伸研究室「マス&コミュニケーションプロジェクト」
/
民放連 放送基準審議会
http://www.nab.or.jp/
■協力:メル・プラッツ http://mellplatz.net/

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2010/8/6 KTS「夏休みテレビジャック」今年も!

2009年の民放連メディアリテラシープロジェクトの実践局、鹿児島テレビ(KTS)
が、今年も継続して実践を行いました。マス&コミュニケーションのメンバー
からは水島久光が、昨年の実践のサポート担当者としてフォローアップに伺い
ました。以下、メディアリテラシー活動を続けていく独自の意義と方法を模索
しながら頑張っている鹿児島テレビの様子を(少しご報告が遅くなりましたが)
レポートします!

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タイトルは「KTSメディアリテラシープロジェクト・夏休みテレビジャック」。
実践期間は、昨年と同じ6日間。7/30-8/1+8/4-6と、途中一週間あいだをあけ
た昨年よりもさらにコンパクトな日程となりました。

<日 程> 7月30日(金) 社内見学、ワークショップ「記者会見」など
      7月31日(土) 番組のつくり方、撮影、編集のワークショップなど
             (実際に撮影、編集して1分程度のビデオをつくる)
      8月01日(日) 企画、ロケハン、絵コンテ
      8月04日(水) 取材
      8月05日(木) 取材、編集
      8月06日(金) 編集、試写会、修了式
      9月上旬    プチ同窓会(合評会)

基本的な考え方、進め方は昨年と同じ。県内の中・高校生を対象にWebや番組
参加者を公募し、グループに分かれてテーマに沿った番組を制作するという
もの。参加生徒も、昨年同様、家族や本人と担当者が事前にしっかり話をして
互いに理解を深めた上で決定しました。

昨年は初めての企画ということもあって66名という驚くべき数の申込があっ
たのですが、今年は32名。やはり圧倒的に中学生が多く、男女比も昨年同様
女子がほとんど。その中から今年は昨年の半分の2チーム、10名を選びまし
た(チーム名は、「ZOOM」と「Hey!Say! Rainbow Girls」)。正直もう少し
応募者が欲しかったところですが、やはり夏休みとはいえ、忙しい中高校生
の時間を、連続一週間ひとつのことに割くことの難しさがあるようです。

2チームにしたのは、確保できた機材の数によるものですが、結果的に見れば、
昨年(4チーム)に比べて、子どもたちをきめ細かく看ることができたように
思います。また二チームとも、昨年の方法と変えて、高校生と中学生の混成チ
ームにし、同一中学4名を2+2に分けるなど、年代や学校の組み合わせが、
どのように子どもたちのコミュニケーションに影響するのか、見ていくことに
しました。最初はやはり高校生が引っ張り、中学生の発言が少ないなどの問題
が見らたようでしたが、最後の二日間は、両チームとも中学生の頑張りが高校
生を助けるシーンが目立ったように思います。

一日目、二日目の内容は、「詰め込みすぎ」「中学生の、状況適応のスピード
を考慮する」などの昨年の反省を活かし、大幅に組み直されていました。特に
初日に、なかなか子どもたち同士のコミュニケーションがスムーズにいかない
問題があったのですが、今年は「話合い」の前に、アイスブレーキング的に写
真を撮りあう「作業」を入れ、これが功を奏しました。また社内見学の後に新
たに設けた、「記者会見」シミュレーションが成功。取材者によって会見内容
の切り取り方に違いが出ることなど、比較的早い段階でメディア・リテラシー
らしい「気づき」感覚に子どもたちを引き込むことができたようです。

  s-構成.jpg  s-レインボー農家取材.jpg

昨年、局スタッフが最も悩んだのは「子どもたちとの向き合い方」。しかしこ
の点については、リーダーの松元さんほか、昨年経験をした社員と大学生を中
心に、かなりの進化が見られました。「教え込む」のではなく、また逆に「や
りっぱなし」にもさせずに、上手に子どもたちの作業やコミュニケーションに
介入して、「考えさせ」「決断を促す」働きかけがうまく行ったように見えま
した。プログラムの進行にやや気をとられていた昨年に比べると大きなの差。
ここに余裕が生まれたことによって、「視聴者をイメージすること(放送は、
単なるビデオ制作ではない。きちんとメッセージを相手に伝わるかたちで発信
すること)」を、かなり早い段階から、子どもたちに意識づけできたように思
います。その証拠に、子どもたちの振り返りシートにも「視聴者」という言葉
が数多く書かれていました。

今年は「感謝」が2チーム共通のテーマ。しかし、このテーマのもとに、どん
な「メッセージ」を伝えるか–この点に子どもたちはかなり悩んだように見え
ました。取材が進むうちに、その対象の面白さ(JR鹿児島中央駅駅と映画館、
環境未来館と農業体験)に引っ張られて、「テーマ」を忘れ、単なる取材先の
紹介ビデオに終わってしまいかねない危機に、最終日を前に直面しました。
そこでなんとか踏みとどまることができたのは、ナレーション原稿作成を丁寧
に行ったから。一つひとつの言葉を選びながら、当初のテーマを思い返し、そ
こからもう一度全体の構成を考え直すことができ、なんとか最終日午前中には、
テーマに沿った一本のストーリーを組み立てるところまで辿りつけました。今
回最も子どもたちが「脳みそに汗」をかいた時間だったように思います。

しかし子どもたちは一旦フリーズしはじめると、なかなか動きをとりもどせま
せん。もちろんこのように「締切」にあわせて時間管理を行う経験はないので、
仕方ないのですが–周りを囲む大人たちは、最後まで「冷や汗」をかきました。
特にこの鹿児島テレビの実践は、放送に対する責任意識に気づいてもらうこと
も狙いに含め、「時間厳守」を掲げています(昨年は、そのために完成できな
いチームもありました)。今回は、2チームとも滑り込みセーフで、なんとか
達成感を与えてあげることができましたが、最後の1時間は「料理の鉄人(古
い!)」なみの、かなりの緊張感でした。

フォローアップに伺って感じたことは、この鹿児島テレビのチームは、かなり
「自分たちなり」のメディアリテラシー実践の「あり方」を掴みつつあるとい
うこと。しかしそれだけに、今後どうしたら安定的にこの事業を続けることが
できるだろうかが議論になりました。いまのところ社内の理解はかなり得られ
るようになってはきていますが、それでもかかる経費と社員の業務負担の問題
は大きく、実践を支える資金、体制、さらには経営戦略における積極的な位置
づけがなされるべきなど、課題は山積していると言えます。

ともあれ今年も大成功で、さらに一歩階段を上った感はありました。最終的な
評価は、8月30日14:00〜の番組OAを踏まえた9月の合評会で、少し距離をと
った眼差しで子どもたちが、どう自分たちの学びを振り返るかを見てからとい
うことになりますが。なによりもこうしたプロジェクトは「継続してこそ価値
がある」ということを実感しました。なんとか今後も実績を重ね、新しい放送
を介した地域づくりの活動として根付いていくことを期待しています。

(報告:水島久光)

*昨年のレポート

マス&コミュニケーション

*KTS鹿児島テレビ(2009年の取り組み)

http://www.kts-tv.co.jp/company/literacy/index.php

*2010年 番組のお知らせ

http://tvinfo.ktstv.net/e18681.html

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2010/7/26 民放連P 文化放送の実践スタート!

2010年度の民放連メディアリテラシープロジェクト、「文化放送」での実践がいよいよスタートしました。
中学生と文化放送の局員がいっしょになって街の特ダネを探すプロジェクトです。
詳細は、下記のホームページをぜひご覧ください。局員の皆さんの率直な気持ちが、ブログを通して伝わってきます!

文化放送メディアリテラシー実践HP

 

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2010/6/30 テレビ信州再訪記

 6月30日(水)、マス&コミュニケーション・プロジェクトの林田真心子さんと水越伸(僕)で、テレビ信州の倉田治夫さん(常務取締役・総務局長)、平坂雄二さん(常務取締役・報道制作局長)、湯田邦彦さん(長野市フルネットセンター・総合プロデューサー、テレビ信州報道制作局)ほかのみなさんにお会いしてきました。
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 テレビ信州は2001年度、02年度と、「民放連メディアリテラシー・プロジェクト」をパイオニア的に進めた長野県の民放局。90年代の松本サリン事件報道がかかえた一連の問題をふり返ることをきっかけに、局独自でメディアリテラシー活動を模索していました。2000年前後、民放連とメルプロジェクトが連携して何らかのメディアリテラシーの活動を展開しようとなった時、まずはすでに活動しているテレビ信州に声をかけ、協力を仰ぎ、パイロット研究と位置づけてスタートすることになったのでした。その際には長野県でメディアリテラシーを進めていた林直哉さんをはじめとする中学・高校の先生方に大変尽力していただきました。
 番組づくりからはじめてみること、送り手と受け手が協働すること。民放連プロジェクトのこの二つの特徴は、このテレビ信州の実践現場でたたき上げられたものだったといえます(同時並行した愛知・東海テレビ放送の成果も大きいものでした)。
 あれから8年。テレビ信州のみなさんとはシンポジウムや研究会で時々ごあいさつはするものの、本格的に協働する機会を持たないままになっていました。そこで夏らしい晴天のこの日、僕たちは長野市へ向かったわけです。テレビ信州は数年前から、長野市フルネットセンターという施設の指定管理者となっており、そのなかでパソコン研修、マルチメディア体験などと一緒に、番組制作体験を通したメディアリテラシーの活動を継続展開していました。
 長野市フルネットセンターは、ズバリ言って長野オリンピックにちなんだ箱物行政の産物。しかしテレビ信州はそこを人々がメディア体験をできる場所にうまく組み替えているなというのが、建物を訪れた僕の最初の印象でした。
 番組制作体験は、民放連が青少年という枠内でやっているのに対して、シニアの方まで幅広く対応をされているとのこと。
 さらに同センターにおいて長野市の一部委託を受けて、「愛TVながの」というインターネットテレビ局を開設。地元企業や行政、大学、観光などの地域情報とともに、市民のビデオ映像を流したり、メディアリテラシー実践の記録をアップしたりと、盛りだくさんな内容になっています。ゆるやかにテレビ信州の番組やネットともリンクしています。
 このように長野市フルネットセンターという施設を通じてテレビ信州の実践はしっかりと地域に根づき、展開しているというふうに感じました。公共施設を巻き込んでの恒常的な活動をおこなう民放連プロジェクト実践局は、今のところ見当たりません。
 そのうえで課題と今後のことでいくつか話し合いをしました。
(1)テレビ信州のメディアリテラシー活動がほぼすべて長野市フルネットセンターへ移行してしまっているが、局の方でもなにかをやっていくようにしていきたいということ。そこで最近は、局内見学や大学生らのインターンシップを導入しているとのこと。これはテレビ朝日との共同研究「ろっぽんプロジェクト」の活動とも重なるなと思いました。
 僕はこの他、長野市フルネットセンターのパソコン研修、ケータイ講座などはメディアリテラシーとすぐにでも結びつけられますし、局員研修として「送り手のメディアリテラシー」を採り入れ、若手に関心を持ってもらうとよいのではないかと考えました。
(2)愛知淑徳大学の小川明子さん、伊藤昌亮さんらがメディア・エクスプリモの一環として進めている「メディア・コンテ」のような、一種のデジタルストーリー・テリングを導入するというアイディアです!とくにシニアの方々と大学生が一緒に写真物語をつくるという「豊橋メディア・コンテ」的な活動は、テレビ信州ならかなり現実性が高い!
 ただ詳細は秘密です(笑)。
 今後小川さんらと話し合っていければと思っています。
 いずれにしても久しぶりの再会に最後は大盛り上がり。林田さんと僕は長野発の新幹線に飛び乗ったのでした。
 みなさん、大変お世話になりました。僕が民放連プロジェクトについて日頃思っている課題と発展の可能性について、きわめて的確にご理解いただくと同時に、アイディアもいただけ、うれしかったです。必ずまたうかがい、今度は現実的なかたちで協働させていただければと思っています。

(水越伸)
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2010/6/14 山口放送徳永氏、広経大「メディア・リテラシー」ゲスト講師に

 広島経済大学の土屋です。私が担当している授業「メディア・リテラシー」では6月14日、山口放送の徳永謙太郎さんにゲスト講師としてご登壇いただきました。山口放送は2007年度の民放連メディア・リテラシー実践プロジェクトの採択局で、徳永さんは実践のリーダーとして県内の中学生・高校生とのミニ番組の制作に取り組まれました。山口放送ではメディア・リテラシーを一回限りの試みとすることなく、2008年度には「親子でラジオディレクター」、2009年度には「高校生カメラマンチャレンジ」と活動を展開されています。
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 授業ではまず徳永さんが日常行っているディレクターや総合演出などの業務を説明いただいた上で、メディア・リテラシーにどう取り組まれたのか、ローカル放送局、また放送局員に活動がどのような意味をもたらしたのかをご報告いただきました。徳永さんは、いつもの「取材する/される」という立場とは異なった関係を地域の人々と結べることがよく、そこに地域放送局の可能性を見出せた、と話されました。
 この授業は「記者会見ワークショップ」を兼ねており、徳永さんの講義について学生に記事を書いてもらいましたので、ご紹介します。詳細はこちらをお読み下さい。

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新たな可能性を見つけるために――山口放送 徳永謙太郎さん
 広島経済大学経済学部メディアビジネス学科2年 田中詩織
 山口放送で総合演出という仕事をしている徳永謙太郎さんにお話しを伺った。山口県には民放テレビ局が3社ある。その中で山口放送でしか行っていない取り組みがある。それはメディアリテラシー活動である。日常業務のプラスアルファという形で休日返上で取り組んでいるのである。
100614tokunaga2.jpg 具体的にメディアリテラシーについての取り組みとはどのようなものなのか。この3年間での取り組みは、(1)県内中高生とのテレビ番組制作、(2)県内親子を対象としたラジオ番組制作、(3)県内高校生対象のカメラマン体験である。3つに共通することは、情報の受け手側である子どもたちが、送り手側を体験することで新しい発見ができるということである。企画・取材・編集などすべてを子どもたちに行わせる。大人にはない、子どもたちならではの感覚で制作は進むのだ。
 しかし、徳永さんはここで重要なことに気が付いた。「子どもたちの制作しているものは、私たちがよく見る、よく聴くテレビやラジオを真似たもの」になり易いということである。つまり、普段何気なく見ているメディアから受ける影響がとても大きいということを再認識できたのだ。
 放送に携わる者として「情報をどの立場に立って伝えるべきか」ということに一番気を配っているという徳永さん。言い方一つで180度伝わり方が変化する。人一人をどん底に落とすのは難しいことではない。そんなことをしてしまうためにこの仕事に就いたんじゃない。番組制作では常に細かく原稿をチェックし細心の注意を払っていく。
 メディアリテラシーへの取り組みは今後も継続していく。今は制作型から体験型に活動をシフトしていくことを考えているそうだ。アナウンサーや報道記者など、普段できないことを子どもたちに体験してもらうための土台づくりを行っているという。
 メディアリテラシーへの取り組みに参加することによって、テレビ局としての新たな可能性を発見した、と徳永さんは言う。これは地方局だからこそできる取り組みであり、地域の人と関わっていくことで、地域貢献にも繋がっていくのだ。これからも山口放送が、そして徳永さんがどのような活動をしていくのか、楽しみである。

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 ここでは一点のみご紹介しましたが、この課題では、書き方を細かく設定しておらず、約60人の受講生の数だけ様々な「記事」が出てきます。1時間以上の話のどこを切り取ってまとめたのか、タイトルはどうつけたのか、縦書きか横書きか、写真のサイズと配置はどうか、事実誤認はなかったか、主観的・客観的表現はどちらがよいか、など翌週の授業ではみんなでお互いの書いた記事を比べて気づいたことを議論しつつ「記事」について改めて考えていきます。
 放送局で、大学で、メディア・リテラシーの取り組みを繋げていく面白い授業にできればと思っています。徳永さんにいらしていただいたおかげで、教室での学びにリアリティを吹き込むことができました。ありがとうございました!
(土屋祐子/広島経済大学)

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2010/5/1 民放連Pは文化放送と過去実践局へのfollw up

 2010年度に入り1ヶ月が経ちました。
 マス&コミュでは現在、次のような活動を進めています。
(1)09年度まで3年間つづいた「ろっぽんプロジェクト」の報告書づくりを進めています。
(2)今年度も民放連プロジェクトに参画することになりました。今年度の民放連プロジェクトは、新たな実践局として東京の文化放送(JOQR)一局が選出されました。これについては民放連番組部が中心となって事業として進め、マス&コミュのメンバーはサポートをするというかたちとなります。
 先日文化放送に伺いましたが、関係者の意識と士気がとても高い局だなと感じました。これから楽しくやっていきたいと思っています。
(3)今年度の民放連プロジェクトは一方で、過去に実践をおこなった二十局近い放送局に対するフォローアップや、地域ブロック単位でのセミナーなどを展開します。マス&コミュはこの活動について民放連との共同研究のかたちであれこれおもしろいことをやっていこうと考えています。正式、かつ詳細な案内は5月半ば以降に民放連から出される予定ですが、過去の実践局のみなさま、ご予定ください!

(文責:水越伸)

 

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